2015年 年頭のあいさつ (第三回)

2015年年頭のご挨拶、第三回は、CSAジャパン副会長の大和さんより投稿いただきました。


年頭ブログ(第三回)
CSAジャパン 副会長 大和敏彦

皆様、明けましておめでとうございます。

CSAジャパンも1周年を迎えることができましたが、これも事務局長、理事の方々、参加されている方々の精力的な努力によるものだと思います。昨年5月の CSA Japan Summit、11月のCSA Congress開催も成功裏に終わり、認知度も上がり、Working Groupでの活動も積極化しています。本年も活発な活動、それを通じた社会への貢献を期待いたします。

元旦の新聞でも大きく取り上げられていたように、ロボットやビッグデータの活用が広がり、IoTと呼ばれるようにネットワークで繋がる時代が訪れています。IoTでは機器やデバイスがネットワークを通じてクラウドに繋り、機器自身や機器に搭載されたセンサーの情報がネットワークを通じてクラウドに蓄積され、解析が行われ、その結果が再び機器にフィードバックされる複数の機器やシステムから構成されるモデルとなります。扱われる情報もヘルスケアでは、医療情報を始めとする個人情報が扱われたり、重要施設に設置された機器の情報が扱われたりするため、機密度の高い情報がより広い範囲で扱われるようになります。セキュリティの脅威も、サイバー攻撃では、ソニー・ピクチャーズエンタテイメントの例は特殊かもしれませんが、特定の相手をターゲットにした標的型攻撃のような悪質な攻撃が増えていることは事実です。ロボットや自動運転では、情報を扱った犯罪だけでなく、物理的な犯罪や破壊行為につながる可能性があります。いかに便利で効果のあるソリューションであっても、安全で安心して使えなければ、使われません。テクノロジーの進化の状況、それに伴うセキュリティリスクを理解したうえでソリューションの展開を図っていかなければいけません。

CSAジャパンは、1年ですが、CSA自身は2008年から活動を開始しており、グローバルに存在感を持つ組織です。これらを積極的に活用し、クラウド、ビッグデータ、IoTの時代に安心・安全を迎えられるように一層積極的な活動を行うことが期待されています。

 

2015年 年頭のあいさつ (第二回)

2015年年頭のご挨拶、第二回は、CSAジャパン副会長の長谷川さんより投稿いただきました。


年頭ブログ(第二回)
CSAジャパン 副会長 長谷川 礼司

******CSAジャパン、新たな年に向けて******

CSAジャパンが設立し、昨年末で無事1年が経過しました。
事務局長の勝見さんとのお付き合いで副会長という立場で参画させていただきながら殆ど活動らしい活動もできず一年間が過ぎてしまいました。
私自身はセキュリティという領域での技術的なバックグランドがないため、皆さんの運営委員会活動に参加できず、もっぱら懇親会の員数確保という形での参加でありました。私自身の貢献はできませんでしたが、運営委員の方々の活動は素晴らしく日本でのポジション確保とCSAジャパンの露出アップは十分できたのではないでしょうか。

世の中は益々インターネット社会になり、情報の流れは殆どWEBの世界になりつつあります。しかし、その利便性の裏には大きな脅威が存在しています。先ごろの北朝鮮によるソニーピクチャーズへのサイバー攻撃、日本でのマイナンバー登録制度等々、今後益々セキュリティの重要性が増すばかりであると思っています。

利便性と安全性とそれにかかるコストとのバランスが重要と思っています。
CSAジャパンの皆さんのますますのご活躍を祈念しております。

2015年 年頭のあいさつ (第一回)

明けましておめでとうございます。
本年も、CSAジャパンをよろしくお願いいたします。

2015年の年頭に当たり、CSAジャパンの幹部による年頭のご挨拶を掲載いたします。5回シリーズを予定しています。
第一回は、CSAジャパンの事務局長の勝見さんより投稿いただきました。CSAジャパンの経済学から新たな年に向けての決意表明となっておりますので、みなさまご覧ください。


年頭ブログ (第一回)
事務局長 勝見 勉

皆様、あけましておめでとうございます。ご家族ともども、よいお正月をお迎えのこととお喜び申し上げます。今年1年が、皆様にとってよい年でありますよう、お祈り申し上げます。

さて、お陰さまで一般社団法人日本クラウドセキュリティアライアンス(CSAジャパン)も、昨年12月に設立1周年を迎えることができました。設立に際しては多くの方のご参集をいただき、またその後も順調に会員数を伸ばすことができました。ひとえに皆様のご支援の賜物と感謝しています。
という調子で書いていると、1周年記念ブログのようになってしまい、また、CSAジャパンの目的は、ビジョンは、任務は、課題は、と固い話になりそうです。未だ皆様お屠蘇気分の抜けない頭で読んでいただいているものと想定して、ここは少し柔らかい話題にしたいと思います。つまり、飲み食いの話です。

CSA勉強会は、昨年6月にスタートして、11月まで6回、月次開催をキープして来ました(12月は単純にカレンダーとの折り合いが悪いため見送りましたが)。売り物の一つと自負しているのが、毎回後半の懇親会です。1人1000円(会員外は2000円)、という、ほぼ昼食代並みのコストで、1時間半飲み食いしていただけるセッティングにしています。これ、基本的に毎回収支トントンで運営しています。
一方で、12月に初の試みとして実施した、1周年記念会員交流会。こちらの懇親会費用としては、3850円という「多額」をご負担いただきました。これも、ケータリング会社に払った1人当りのコストそのままでご負担をいただきました。
どちらも立食で、時間も1.5~2時間で、飲み物と食べ物が出て、どちらも量が足らないということはなくて、会場は会議室の転用で、と見てみるとさほどの違いはありません。料理は少し差があったと思います。後者は生ビールもピッチャーで来ましたし、専任の係の方のフルサービス付きでした。それでこれだけの価格差、というのは、どうなんでしょうか。ちなみにケータリング方式、すなわちパーティ出前サービスの場合は、サプライヤーは何社かありますが、どこも似たような価格設定のようです。なお、1周年記念会員交流会では、この他に会場費が、会議時間も含めて16000円ほどかかっています。

この内容・サービスの差と価格の差のバランス、皆様はどう思われるでしょうか。更に比較するなら、最近はレストランでの宴会も、最安は飲み放題つきで3000円ぐらいからあり、4000円なら温かい料理と飲み放題で、当然フルサービス付き、とう世の中ですよね。デフレのおかげというべきか、企業努力の賜物というべきか。。。結論としては、プロのサービスを利用する範囲において、こちらで会場を用意して「パーティの出前」を頼むよりは、レストランや居酒屋さんの、それなりの雰囲気の中でやる方が、実は安い、ということになりそうです。

無論、勉強会でやっている、おつまみの出前と乾きモノと缶ビール、すべて手作り感、すなわちセルフサービス、ベースなら、間違いなく安く上げられます。だいたい4分の1のコストで賄える訳です。それが、料理と飲み物のグレードがほんのわずか上がり(勉強会でとっている出前のおつまみは、出張パーティケータリングと、基本的に同じ業者から来ます)、サービスが加味されるだけで、4倍の費用がかかるという現実。

皆様は、当たり前、という感じでしょうか。つまりケータリングならそれぐらいかかるよ、と。それとも、4倍はいくら何でも高いよ、という感じに近いでしょうか。いずれにせよ現実は、ちょっと飲み会をやろうと思うと、自前手作り方式がかなり「コスパ」の高いところに位置して、かなり離れてレストラン/居酒屋での宴会、その少し上にケータリング方式、そして多分それからまた少し上にホテルでの宴会、という地図になりそうです。

そのように眺めると、やはり一番コストがかさむのが、人のサービスを買う部分、という構造が見えて来るような気がします。昔は「人海戦術」という言葉がありました。機械を使うより、サービスを買うより、とにかく安い(あるいはタダの)人手でこなしてしまえ、という感覚でした。が、今や人が何かをすると高くつく世界になってしまいました。

とまぁ、新年早々みみっちい話を書いてしまいましたが、食べつつ飲みつつ歓談することが交流・懇親の最良の手段であることは異論の余地がないでしょう。ので、CSAジャパンとしては、毎月の懇親会つき勉強会は可能な限り展開していきたいと思っていますし、1000円(非会員は2000円)の、格安会費も維持したいと思っています。そして時々はプロのサービスも買う懇親会(基本的には勉強会以外の場で)も織り交ぜて行きたいと。

ということで、CSAジャパンの付加価値の中身は、ワーキンググループを始めとする調査研究活動によって築いていただくとして、事務局としては「懇親の場の提供」に引き続き取り組んでいきたいと思っています、皆さま多数の、毎度のご参加をお待ちしています。

…と言いつつ、飲んでダべるのがひたすら好きな私の、「今年も飲み会やるぞ」宣言にすぎなかったようです。皆様、今年も飲みましょう!!!

 

法人化1周年にあたって

一般社団法人 日本クラウドセキュリティアライアンス(CSAジャパン)が2013年12月3日に発足して1年がたちました。この1年の活動を振り返り、CSAジャパン会長の吉田 眞先生からメッセージをいただきました。CSAジャパンの今後の方向性の提言、また、現在の社会全体に向けての提言として、非常に深い内容となっています。ぜひ、ご一読ください。


吉田 眞  東京大学名誉教授
CSA-JC会長
TM Forum Distinguished Fellow, Ambassador

 早いもので、CSA-JCの法人化から1年が経過した。事務局長の勝見さん始め関係者の方々の多大なご努力によって、組織らしい活動になってきた。まず、主体的に活動していただいている会員企業、理事会、運営委員会、個人の会員の皆様に改めて感謝申し上げたい。

1年を振り返って本団体の状況について、正直に感想を言わせてもらえば「まだまだ立ち上げレベルにあって足腰が強くなったとは言えず、活動・組織の拡大を云々する以前の問題に取り組まねばならない」ということになる。特に現状の活動は、特定の方々の個人的なご献身・ご努力に依存していると感じる。これはちょっと残念なことではあるが、逆に考えれば「CSA-JCには、これから広がる将来がある」とも言える。

■ CSAは”シロートっぽい”

1年前に「会長」を打診されたとき、少々警戒した。自分自身はクラウドにもセキュリティにも十分馴染みがあったが、この2つが連結した名前の団体については、正直全く知識が無かったからである。さらに、CSA本部の組織活動のやり方が、小生がこれまで関わってきた“海千・山千”が集まる諸団体、あるいは(活動内容ではなく)組織運営・管理についてプロ意識(“プロ”ではないことに注意)の高い諸団体とは“珍しく”異なっていて(米国なのに)実に“素人っぽい”、良く言えば善意だけで動いている、ちょっと危ういという印象を受けた。このことも「安易に直接関係しない方が良いのでは」と感じた理由であった。「これまでよく変な輩に掻き回されず、外部からの危険な働きかけも無かったものだ(外部に見えないだけで実際にはあったのかも知れないが)」と、感心(?)したが、CSA本体の組織活動の”素人っぽさ”は、今でも気になっている。

それでもボランティア会長をお引き受けしたのは、JNSAの設立当時から理事会での同僚で旧知だった勝見理事・事務局長の人柄と説得(?)によるものである。失礼ながら「JNSA関係者も多いようだし(小生自身、現在JNSA顧問だし)、何より勝見さんがやるのなら変なことにはならないだろう」と考えたからである。

なお、念のためにお断りしておくが、上記で「プロ」と言った意味は「組織運営をプロ化すべき」ということではない。申し上げたいことは、あくまでも、
・活動は、個人個人の情熱によるボランティア精神がその基盤であり、
・会員企業・団体が、組織として主体的、積極的に支援し、推進する、
・一方で、法的な団体としてのCSA(-JP)の組織運営・管理は、社会に対する責任を負って履行するために、幹部(理事会、運営委員会、WG責任者)と事務局が“プロ意識”で遂行する、
・これら全てを以って、現在から将来への社会に創造的価値を提供する、
ということである。

■ 今後の取り組みに向けて

この機会を利用して、以下に改めていくつかの課題を挙げさせていただきたい。業界では共通認識となっていることや、これまで折に触れて申し上げてきたことも多いが、今後のCSA-JCの取り組みを議論する際にご参考にしていただければ幸いである。

■■ 基本的な問題 - セキュリティは余計なコスト

周知のごとく基本的で最も大きな問題は、セキュリティ自身の性格にある。即ち、セキュリティに対する「本来あるべきではない余計なコスト」という抜きがたい認識である。これは、企業、個人に共通な“岩盤意識”なので始末に悪い。

小生は永年(ネットのみならずビジネスの全要素の)運用・管理(Operation & Management; O&M)の問題に関与してきたが、この世界も伝統的にセキュリティの場合と全く同じ考え方であった。即ち、企業の経営陣はO&M関連業務をコストと考え、現場は「トラブルの後始末をさせられる」という意識で士気が上がらないという状況にあった。ついでに言えば、日本ではO&M技術者のスキルが高いことが余計問題の本質を隠してきたが、この状況は現在でも存在すると感じる。

この問題の解決に取り組んだのが、O&Mの共通規程・枠組みの確立を狙いに1988年にNM Forumとして設立され、以来そのスコープを“伝統的なO&M”から新しい世界へと、常に先見性を以って拡大しながら発展してきたTM Forum(TMF)というコンソーシアムである。即ち、時代とともに、全世界の関係者、サービス・ビジネス事業者、システム・装置ベンダ、インテグレータ、利用者を巻き込んで、コスト(マイナス)自体の低減だけでなく、O&M関連業務・機能のビジネス化による増収や人材育成、品質向上、価値創造(プラス)のための総合施策を、時代を先取りしながら展開してきた。その活動は、利用者(アドバイザリボード)、トップ経営陣、中間管理層、現場業務従事者、技術開発部隊の全ての段階で実施され、業界の意識改革を推進した。この結果「O&M業務・機能・システムはコストではなく、ビジネスの核である」という意識が関係者(stake holders)のトップから現場まで共有されるようになっている。ただし、日本では独特の企業文化もあって、残念ながら真の理解、及び世界との協働意識は依然として低いと感じる。これは、後に触れる日本企業の特質の表れの一つである。

上述のTMFの例には、CSAでも参考にできる部分がある。しかしながら、セキュリティの領域は犯罪要因や倫理、リスクと直接関連するので“他人の迷惑を商売にするのは道徳的に良く無い”という否定的なイメージが強い。特に日本では“士農工商の階層化”を引きずって“お金儲けは賤しい”という意識も根強い。これには、“それを超える社会的に大きな益がある”ことを示して、抵抗感を和らげていくことが考えられる。さらに、“自分は大丈夫、うちの会社には起こらないだろう、起きるかどうか判らないことにはもったいないからコストは掛けない”という意識も社会全体の“空気”のようになっており、ビジネスへの大きな壁である。

さらには、「都合の悪いことは見ないことにする、表立って議論してはいけない、曖昧のままにしておくのが良い、起きて欲しくないことは“起きないことにする(少なくとも自分が生きている間は)”、過去に起きたことは忘れることによって“無かったこと”にする」といった深層心理がある。このため、深刻な災害・事故・問題が発生する度に一時的に意識が上がって、対応する規則・基準等が整備されるが、肝心の実践段階では「知っていたので準備(だけ?)はしていました」と言い訳をするための“アリバイ”作りの行動になってしまう。

このような人類の、特に日本人の持つ“特質”は何もセキュリティに限ったことではなく、自然災害発生の予想、エネルギー資源問題、地球温暖化問題などあらゆる局面で見られる。このようなマインドを克服するための、セキュリティでの対策は、1)(コストを惜しんだために生じる)実害のマイナス・痛みを身を以って体感すること、2)実害を被る機会を強制的に作ること、及び、3)コストとしてのマイナスを(実効的に)低減し、プラスを増やす施策を策定し具体的に実施すること、である。地震、津波等が起きる度に悲惨な状況を繰り返すのは“過去の嫌なことを忘れる人間の基本的な特性”によるものだそうである。これへの対策は「身を以って体験」を強制的にかつ定期的にくり返すことであろう。一方、“プラスの増加を実感できる”施策の具体的な提案は、現在進めているWG活動の大きな検討課題と考える。

■■ 活動メンバを増やす - 学生の参加がカギ

最近はどの組織・団体でも「若者が少ない、よって次代の活動を担保できない」という問題を抱えている。これには「学生の取り込み」が有力な解決法である。当然ながら学生は2-3年ですぐに社会人・職業人となるので、学生時代から巻き込んでおけばそのまま継続的な活動の源泉となるからである。

ここで再度TMFの実践例を紹介する。TMFでは長い間、大学で代表される高等教育機関を一般会員に含めていた。大学は本質的に金銭的余裕が無く会費を払えないので、この規則のため大学の会員は殆ど皆無であったが、2年前に若手の巻き込みと研究・開発連携の課題を強く認識し、高等教育・研究関係機関の会費を無料とした。(ただし、無料という情報は公式サイトには無く、マーティングと個別で対応している。)これにより、大学・教育機関の会員数がほぼゼロから一挙に90を超える数まで増加した。大学は、TMFのドキュメントやトレーニングのコンテンツを教育に自由に使え、技術課題を研究テーマとして研究活動に活用できるようになり、さらには企業との共同研究・実証実験への参加などの機会が増加した。これらを通して、教員と学生の直接参加を拡大しており、活動を実体験した学生がTMFの“ファン”になって、企業に就職した後もTMFに継続的に関わることが実現している。Win-winである。

大学等の教育・研究機関が会員になれば、学生を巻き込めるだけでなく、学界・学会に影響を与えることができ、さらにはその団体への当局の注目度も高くなる。大学は基本的に貧乏なので団体にとって財政的な利益は期待できないが、直接の連携・協働により補って余りある実質的な益を得られる。

■■ 企業会員を増やす 

CSA-JCでは、若い活動者が少ない云々の前にWG等での実活動者がまだ少ない。活動者を増やすためには、そして組織基盤を安定させるためには、まず企業会員を増やさねばならない。ここで基本的な問題は、主要な活動母体となるべき(特に日本)企業の“即益思考”(直接の利益が直ぐに見えない限り投資しない)と、“後出し思考”(リスクは小さくてもとらない、皆がやるならやる、標準は決まってから使えばよい)である。もちろん、全ての企業がそうだと言う訳ではない。“空気”として存在し、時としてこの思考が支配的になるということである。

IT分野の某任意団体を一般社団化した経験をその責任者である知人から聞いたが、彼が経験している以下の問題はどこでも起きており、CSAでも全く同様と感じた。即ち、任意団体として活動している間は、企業はコストがかからずに(実は見えないコストがかかっているのだが)自社の宣伝ができ、また影響力も持てるので、自社の社員の活動を奨励あるいは少なくとも黙認している。ところが、いざ法的な地位を持つ団体に移行するとなると、会費(=コスト)を支出するための壁が突如立ち上がる。そして、企業は今まで自由に活動してきた/させてきた社員の活動を少なくとも陽には認めず、勤務時間内の出張・外出はできなくなり、結局個人としても身動きがとれなくなる。結果、法人化したことによって却ってその団体の活動パワーは低下する、ということになる。

さて、このような状況をどうやって克服していくか、、、 先に述べたように、これは日本全体の課題であり、CSA-JCだけで解決できる問題ではないことは明白であるが、以下のようなことを率先して行う価値はあると考えている。

■ 日本の旧い思考と原理を捨て去る

既に何年も前からグローバル化、少子化、高齢化等と連動して、経済活動、労働環境、生活・家庭環境等の全てにおいて、活動基盤、構成原理・構造、モデルが過去の成長・安定期のそれらとは全く異なってきており、従来の方法では原理的に発展はおろか維持すら望めない状況になっている。問題は、この認識が無いように見えることであり、昨今、日本としての施策が期待した通りに効果を挙げられない理由は、全く異なってしまったものに古びた過去の思考と手法を能天気に当てはめているからである。

従って重要なことは、産官学全てが、内向きで過去の成長期の成功体験と強い思い込みに囚われた思考体系と行動原理を完全に捨て去り、少なくとも100年先を見通した全く異なる思考と方法に基づいて、将来の日本を客観的に外から見て冷静に何が必要かを決めて実行していくこと、である。先を見て「適切かつ十分なデータを集め分析し、モデルを変えて、リスクを取り、自己中心から脱却し、自己変革」できれば、日本と日本の企業が将来に繋がる積極的な手を緊急に打つことが重要であることを理解でき、実行できるようになるはずである。

組織は“人のΣ(積分)”であり、個々の人が変われば組織は変わる。社会を取り巻く環境は大きく変わっているが、組織が変われば、社会全体としての対応力も変わっていく。そのためには、産官学の“変われない/変わりたくない化石世代”は早急に表舞台から降りてもらうことが、日本が持続可能なグローバル社会の重要な一員であり続けるために必須である。

「お前こそどうなんだ、化石世代じゃないのか? 表舞台からおりたらどうだ」と言われそうだが、一切ご心配なく、最初から表舞台にはいないので。

真面目な話に戻って、CSA-JCの活動を将来に向けて上記のような方向づけ・動きに寄与できるように展開していければ、現在会員ではない企業も会員企業も個人もその意義をより強く意識でき、法人化した効果がさらに大きくなるであろう。

話が抽象的で広がり過ぎたが、当法人の活動の在り方について、さらに会員の皆さんと議論をオープンに活発にしていきたいと考えているので、これからもよろしくお願いしたい。

MacY

CSAガイドに基いたホワイトペーパー(第6回CSA勉強会より)

2014年11月26日
日本クラウドセキュリティアライアンス 理事
諸角 昌宏

CSA勉強会の内容をできるだけブログ発信していきたいと思います。そこで、まず、11月25日に行われた第6回勉強会より、株式会社 日立システムズの藤井康広氏が行った「CSAガイド等に基づいた日立システムズのクラウドセキュリティの取組み」について報告します。なお、勉強会の資料等については、以下のURLを参照して下さい。

http://www.cloudsecurityalliance.jp/Benkyokai/20141125/DLMenu.html

日立システムズでは、「クラウドサービスのセキュリティに関する取り組み」というホワイトペーパーを公開していて、以下からダウンロードが可能です。

http://www.hitachi-systems.com/cloud/whitepapers/index.html

このホワイトペーパーは、CSAが提供しているガイド(ガイダンス)に基づいて作成されています。勉強会では、その背景、概要等を説明していただきました。以下、その内容についてかいつまんで紹介します。

  1. ホワイトペーパーの必要性
    ホワイトペーパーは、以下の3点のメリットがあるため、クラウドプロバイダには有効です。なお、ホワイトペーパーを最初に公開したクラウドプロバイダは、アマゾンAWSとのことで、その後主なプロバイダがホワイトペーパーの公開あるいはウエブ上でのセキュリティ情報公開を行っているとのことです。

    • ホワイトペーパーで、プロバイダのセキュリティへの取り組みを知っていただき、お客様のプロバイダに対する不安を安心に変えることができる。
    • ホワイトペーパーから必要な情報をたくさん取得できるので、問い合わせが減る。
    • プロバイダの市場での認知度の向上が期待できる。

  2.  なぜCSAガイドか?
    ホワイトペーパーの作成にあたって、CSAガイドを使用した理由は以下の3点です。

    • グローバルな業界標準であること。ちょっとでも海外に進出している企業や海外から日本に進出している企業は、CSAガイドの内容を参照しています。また、RFPにCSAガイドの文言を入れてくるケースも多いとのことです。
    • 目的志向 CSAガイドは、具体的な手順等ではなく、目的レベルの要求事項で記載されているため、ユーザと共同して作成していく時に、コンサルの視点から有用です。
    • 網羅的 CSAガイドは、運用面、実装面で網羅的にまとめられていて、こちらもコンサルの視点から有用です。CSA以外のガイドは、ISMSとかの基準に偏りがちであるとのことです。

  3.  ホワイトペーパーの作成方針
    ホワイトペーパーの必要性に基づいて、以下のように作成しています。

    • 安心セキュリティに関する業界標準に幅広く対応していることを記述しています。これにより、導入コストの削減を可能にしている点がアピールされています。
    • 必要な情報を、より多く CSAガイドとの対応関係、対応状況を詳細に記述しています。また、ホワイトペーパーとは別に詳細な対応一覧表を作成しています。こちらは、一般には公開されていませんが、NDAベースでの提供を行っています。
    • 認知度向上ホワイトペーパーの他に、ダイジェスト版も公開していて、より分かりやすい形での情報提供をおこなっています。

最後に、以下の2点の要望がクラウドプロバイダとして上げられていました。

  • いろいろなガイドや規格が乱立しているので、何をやれば良いかが明確でないし、二度手間になることも多い。関係整備が必要。
  • クラウドセキュリティ規格の一元化が必要。

CSAでは、CCMなどを通して他の規格等のマッピングを行っています。日本でのマッピング(経産省ガイド、総務省ガイド、ASPICなど)も検討していきたい。

 

過去ブログ: Poodle: どれくらい悪いものなのか

2014/10/20(月曜日)

日本クラウドセキュリティアライアンス 理事 諸角 昌宏

CSA Blogに「Poodle – How Bad Is Its Bite? (Here’s the Data)」の記事がアップされましたので、その概要を紹介します。(2014年10月17日)。記事については、以下のURLを参照して下さい。https://blog.cloudsecurityalliance.org/2014/10/17/poodle-how-bad-is-its-bite-heres-the-data/

POODLE (Padding Oracle on Downgraded Legacy Encryption)は、10月14日に報告された脆弱性で、クラウドサービスに大きな影響を与えるものです。Poodleの詳細なレポートが、Googleの3人のセキュリティアナリスト(Bodo Moller, Thai Duong, Krzysztof Kotowicz)によって作成されました。レポートは以下のURLより入手可能ですので、Poodleの詳細を理解したい人はこちらを参照してください。

Poodlsは、SSL v3あるいはSecure Sockets LayerプロトコルVersion3に影響を与えるもので、攻撃者がcookieをハイジャックまたは復号化できてしまうものです。これにより、パスワードなしにアカウントやセッションを乗っ取ることができてしまいます。 SSL V3自体は、すでに古いもので、TLSに置き換えられていますが、下位互換性のためにApache等のウエブーサーバでサポートされています。このフォールバック機能により、TLSで接続できなかった場合に、SSL v3で接続されてしまうことになり、この脆弱性の影響を受けることになります。

解決策としては、サーバ側でSSL V3プロトコルを無効にし、TLSv1.0以上で接続するようにすることです。もう1つ、企業のブラウザおよびプロキシー(フォワードプロキシー)で、SSL v3を無効にし、TLSv1.0以上を許可するようにすることです。別の対策として、OpenSSLが出しているパッチ(CVE-2014-3566)を適用し、TLS_FALLBACK_SCSVを有効にする方法があります。ただし、このパッチは、サーバとクライアントの両方に適用されている場合に有効になるため、どちらかが適用されていない場合にはSSL v3にダウングレードしてしまう可能性があります。したがって、これはTLSに対応していない(SSL v3で 接続しなければならない)サーバにどうしてもアクセスしなければならないケースで、社内システム等で攻撃者から狙われる可能性の無い環境である場合の処置 と考えた方が良いようです。これは、パッチを適用する必要が無いということではなく、パッチを適用することは推奨されますが、根本的な対応は、あくまでSSL v3を無効にすることです(このパッチの内容等については、こちらのubuntuの情報を参照)。

現時点(記事が出された時点)で、まだ61%のクラウドサービスがPoodleの脆弱性に対応していないということです。クラウドプロバイダの早急な対策が必要とのことです。

過去ブログ: CSA Congress2014まとめ報告

2014/10/09(木曜日)

日本クラウドセキュリティアライアンス 理事 諸角 昌宏

9月に開かれたCSA Congress 2014について、CSA(U.S.)のブログに4つの主なトピックについてレポートされましたので紹介します。原文は、以下のURLになりますので、合わせて参照してください。

https://blog.cloudsecurityalliance.org/2014/10/01/csa-congress-recap-roundup/

  1. Ron Knode Award Winners CSA Congressでは、毎年、CSAの活動に非常に貢献のあったメンバーにRon Knodeアワードを与えています。この賞は、2012年に他界したRon KnodeのCSAに対する偉大な貢献、また、ボランティア精神にかける情熱を受け継いでいくために作られたものです。今年は、3名の方が表彰され、その中に、日本から勝見さんが選ばれました。昨年12月のCSAジャパン設立を含む彼の多大な貢献に対して与えられた賞で、CSAジャパンとしても大変誇らしく思います。アワードの詳細は、以下のURLを参照してください。 https://cloudsecurityalliance.org/media/news/csa-announces-annual-ron-knode-service-award-recipients/
  2. Big Data Taxonomy Document CSA のBig Data Working Groupが、Big Data Taxonomy Documentを公開しました。これは、データドメイン、コンピュート/ストレージインフラ、データ解析、可視化、セキュリティ、プライバシーというよ うな非常に多岐にわたってビッグデータをどのように選択していくかのガイダンスレポートとなっています。 詳細は、以下のURLを参照してください。https://cloudsecurityalliance.org/media/news/csa-releases-new-big-data-taxonomy-report/
  3. CSA Survey Finds IT Professionals Underestimating How Many Cloud Apps Exist in the Business Environment CSAが、新しいサーベイの結果を公表しました。本サーベイでは、IT関係者や専門家が自身の環境で使っていると思っているクラウドベースのアプリケーションの数とクラウドアプリケーションベンダーが報告しているアプリケーションの数に非常に大きな違いがあるということに着目したレポートとなっています。 詳細は、以下のURLを参照してください。 https://cloudsecurityalliance.org/media/news/csa-survey-professionals-underestimating-cloud-apps-usage/
  4. Hackathon On! Cloud Security Alliance Challenges Hackers to Break its Software Defined Perimeter (SDP) at CSA Congress 2014 CSAが、第2回Hackathonを開始しました。これは、CSAのSoftware Defined Perimeter (SDP)仕様に基づいて、パブリッククラウド上に展開されたサーバに侵入して秘密の情報をつかめるかどうかを競うものです。世界中から参加することができます。最初に破ることができた人には、10,000ドルの賞金が与えられます。Hackathonは、まだ続いていますので、挑戦してみてください。 詳細は、以下のURLを参照してください。 https://blog.cloudsecurityalliance.org/2014/09/18/csa-hackathon-on-launches-today-at-csa-congress-2014/

過去ブログ: CSA Congress2014 報告 (第2回)

2014/09/25(木曜日)

日本クラウドセキュリティアライアンス 業務執行理事 勝見 勉

さて、CSA Congress 2014の報告 第2弾になります。

オープニングで音楽が鳴り終ってまず登場したのが、総合司会の方。IAPPのえらいさん(No.2か3)なのですが名前は聞き取れませんでした。イベント全体の進行役。偉い人。にしてこれです。アメリカはcasual。日本みたいに〇〇端麗なMCの登場ということはまずありません!!むしろ、そこそこの地位の人がspeakerを紹介する、というのが礼儀のようです。CSA主催のイベントの場合は、その役はいつもJim Reavisです。
ところで服装について言えば、TシャツGパン姿もいる中で、スーツにネクタイの人もいます。最近の日本ならあり得そうな「短パン」は、でも、全然いませんでした。(全体で300-400人集まっている中で)基本的にプロトコルがないかというと、日本よりは「あり」だと、私は見ています。参加者への案内メールには、服装にも触れています。今回の場合は「go sport!」。
それでも初日のIAPPのaward、締めの全体集会でのCSAのawardは、渡す側はスーツにネクタイ。受け取る側は、ネクタイありもいましたが、おおむねジャケットノーネクタイ。この会議はそれほど過激じゃないと言えるでしょう。私に賞を手渡してくれたJim Reavis(CSAのCEO)は、トラブルかあって急きょ自宅からスーツを取り寄せたとか。FedExの迅速さと「私の奥さんは私の靴のサイズを分かっている」こととをたたえて(ノロ気て?)笑いをとっていましたが。

服 装でもうひとつ面白いのは、夕方のパーティ(会場内で立食・スナック程度)になると、女性の多くはいつの間にかドレスに着替えて現れること。時には男も派 手なボウタイなどして登場する奴もいますが。ひんしゅく覚悟で言うと、きれいな女性ほどよりきれいになって登場したりしますね。
さて、少しマジな話。でももう一つトピック。
プログラムでKeynote speakerとして紹介されていた、Adrienne Hall, General Manager, Trustworthy Computing, Microsoft Corp.が突然キャンセル。理由は皆さん、今なら察しが付くかもしれませんが、MSの突然のリストラ発表にありました。Trustworthy Computing (TWC)部門の解散と一部解雇および配置換えが行われたためでした。これは18000人リストラ計画の一環と読めますが、MSにおけるソフトウェア品質の元締め、少なくともそのシンボル的存在であったTWCの閉鎖は、ショッキングなニュースでした。Jim Reavisも、MSで何があったのか、と心配していました。

関連して、ZDNet Japanはその記事の中でこう指摘しています(記事の内容については、こちらを参照してください)。「折しも、問題のある月例パッチ(セキュリティに関連するものと関連しないものの双方)がコンシューマーの元に届けられるという事態が増えてきていると考えられる点について、多くのITプロフェッショナルの間で懸念が高まってきている。」Jim同様、私も心配です。

さて、続報は準備でき次第お伝えします。

なお、プログラムとプレゼンファイルはこちらにあります。ご参考までに。https://privacyassociation.org/conference/iapp-privacy-academy-2014/https://privacyassociation.org/conference/iapp-privacy-academy-2014/sessions/#1BAF591D-4633-40E3-912F-B513FC585871

過去ブログ: CSA Congress2014 報告 (第1回)

2014/09/22(月曜日)

日本クラウドセキュリティアライアンス 業務執行理事 勝見 勉

CSAとして、Congress(秋に行う、教育プログラムを含んだグローバルカンファレンス)は5回目のはずです。昨年まではフロリダ州オーランド(Disney Worldで有名)で、MIS Training Instituteがorganizerとなって実施されてきましたが、今年はIAPP(International Association of Privacy Professional)との合同で、IAPP Privacy Academy & CSA Congress 2014 として、場所もシリコンバレーの中心、San Jose Convention Centerに移っての開催です。
16,17日とpre-conference eventがあり、18日と19日がメインプログラムとなっています。
17日と18日には、コンファレンスプログラムが終了後、展示エリアでのdinnerまでの間の5 minutes mixer hourが行われました。これは日本でいえば集団お見合いイベントに似ていて、長いテーブルを挟んで向かい合わせに座った人同士が自己紹介したり、共通関心領域やビジネスの可能性を探ったりする場で、5分経つと椅子を一つずつずれる、ということで、多くの出会いを演出する趣向です。1時間もやるので、ロスタイムを入れても10人ぐらいとは話ができるわけで、なかなか効率の良い「商談発掘の場」と言えそうです。
オープニングキーノートのトップバッターは、Judith Donathという、ハーバードのフェロー、前MITメディアラボ・ソーシャルメディアグループのディレクターという経歴の女性でした。プライバシーについての考察でした。60年 前のカフェのスナップ写真を紹介し、皆正装してお茶を飲んでいると指摘。そこから人々はどんどんカジュアルになる、つまり「公」と「私」の境・垣根が低く なる方向に行き、一方「公」におけるセキュリティ目的の監視は激しくなる、という中でプライバシーはどう担保されるのか、という切り口での考察でした。
ア メリカでは、「個人情報」よりもプライバシーが強く意識されています。逆に言うと個人情報、特に個人識別情報については、全くオープンです。この会議の配 布資料にも、参加登録したすべての人の氏名と所属がリストとして入っています。私の個人的感覚からは、こちらがまともに見えますが。
ということで、物理・サイバーを含むセキュリティを確保するための公的部門の役割と、そのために収集されるプライバシーにかかわる情報の保護と利用は、ますます複雑な、いろいろの考えが錯綜する課題となりそうだ、という感じで聞いていました。

続報は、準備でき次第お伝えします。
なお、プログラムの詳細はこちらを参照してください。https://cloudsecurityalliance.org/events/csa-congress-2014/