ゼロトラストの2つの成熟度モデルを理解する

Understanding the Two Maturity Models of Zero Trust
ゼロトラストの2つの成熟度モデルを理解する

本ブログは、CSA本部のブログに公開されている「Understanding the Two Maturity Models of Zero Trust」の日本語訳となります。原文は、こちらを参照してください。本ブログは、著者の許可のもとに翻訳し公開するものです。原文と日本語版の内容に相違があった場合には、原文が優先されます。


Blog Article Published: 05/17/2023
Written by John Kindervag, Senior Vice President, Cybersecurity Strategy, ON2IT Cybersecurity.

ゼロトラストの世界における一番の間違いは、一枚岩的な思考です。一口で象全体を食べることが可能であると信じてしまっていることです。組織の最大の間違いは、すべてのゼロトラスト環境を同時に展開しようとすることです。規模が大きすぎるのです。その結果、すぐに失敗します。このような組織は、ゼロトラストについて考え、議論することにすべての時間を費やしていますが、実際に実行に移すことはできません。

2つ目の関連する間違いは、戦術的に考えすぎてしまうことです。製品や技術にのみ焦点が当たってしまっています。戦略を投げ捨てています。このような技術への過度の集中は、サイバーセキュリティの目的である「何を守る」ということを見失わせます。

このことは、進捗を測定することを難しくしています。私は、サイバーセキュリティの進歩を測る最適な方法は、成熟度であると確信しています。

Forrester Researchに在籍中、私は包括的な企業サイバーセキュリティ成熟度評価プロジェクトに携わりました。その後、私はそれをゼロトラストの最初の成熟度モデルに適応させ、報告書にまとめました: “Asses Your Network Security Architecture with Forrester’s Zero Trust Maturity Model “というレポートです。(注)私がレポートを執筆したのは2016年末ですが、出版されたのは私がForresterを退社した後の2017年です。筆者名のところに私が3番目に記載されているのはこのためです)。

“Asses Your Network Security Architecture with Forrester’s Zero Trust Maturity Model” レポートの最初のページが以下です。

図1

何年もかけて、実際の顧客との関わりの中で、このモデルを改良する機会を得ました。このモデルは、NSTACの報告書の中で体系化されています。Appendix Aをご覧になれば、より深く理解することができます。

簡略化した図が下の図です。これは、最近CSAで行ったプレゼンテーションも含め、モデルを説明する際に使用している図です。

図2

この成熟度モデルは、「ゼロトラスト」の5ステッププロセスに基づいており、プロテクトサーフェス単位でスコア付けされます。カーネギーメロン大学が開発した標準的な5段階の成熟度パラダイムを使用しています。

各プロテクトサーフェスは個別にスコア付けされます。このモデルでは、プロテクトサーフェスとDAASの両方の要素を特定することが必要です。このようにして、成熟度のスコアを管理しやすい一口サイズの塊に分割しています。プロテクトサーフェスとしてディレクトリサービスを使用した例は、NSTACの報告書のAppendix Aに記載されています。

つまり、プロテクトサーフェスが完全に最適化されていれば、最大25点というスコアで採点されることになります。ON2ITでは、このようなことはほとんどありません。

図3

次に、すべてのプロテクトサーフェスを集計して、組織の総合スコアとプロテクトサーフェスごとの平均スコアを定義することができます。この例では、平均成熟度スコアは3.8であることがわかります。また、すべてのプロテクトサーフェスにおける成熟度の分布も見ることができます。この情報をもとに、組織は成熟度の低い特定のプロテクトサーフェスを重点的に強化することができます。

図4

では、新しいCISAゼロトラスト成熟度モデルはどのようにフィットするのでしょうか。この成熟度モデルは、実は5ステップ成熟度モデルにうまく統合されています。両者は補完関係にあると考えたほうがよいでしょう。

図5

私は最近、CISAの本社に行き、CSA Zero Trustの運営委員会のメンバーであるSean ConnellyとJohn Simmsを含む、この文書を作成した数人の人物とこの話題について話し合う機会を得ました。私たちは、5ステッププロセスの各ステップで使用される適切なテクノロジーをどのように定義できるかについて議論しました。

プロテクトサーフェスごとの成熟度モデルとCISA成熟度モデルの間のほとんどのマッピングは、ステップ3:ゼロトラスト環境の構築で行われます。以下は、ON2IT AUXOマネージドサービスポータルでどのように表示されるかの例です。

図6

どのコントロールが実施され、どのコントロールがまだ必要なのかを確認することができます。ポータルサイトでは、プロテクトサーフェスをForrester ZTXフレームワークまたはCISA成熟度モデルにマッピングしたレポートを作成することができます。

ForresterのZTXフレームワークといえば、まさにPillar(柱)成熟度モデルの前身といえるでしょう。Chase Cunningham博士がフォレスター・リサーチに在籍していたときに作成したもので、「プロテクトサーフェスごとの成熟度モデル」を補完するために作られました。この歴史は失われてしまいましたが、フレームワークの意図と、それがどのように “柱” につながったかを理解することは重要です。ChaseとForresterの彼のチームは、称賛に値します。

図7

では、どちらの成熟度モデルを使うのが良いでしょうか?その答えは、両方です。なお、CISAの文書には、「CISAのZTMMは、ゼロトラストへの移行をサポートするための多くのパスの1つです」と記載されています。

多くの組織が「柱のモデル」を文字通りに受け取りすぎており、それが重大な実装の問題につながっています。例えば、ある組織は、左から右へ進めていく必要があると考え、アイデンティティの柱から始めます。組織内のすべてのアイデンティティの問題を解決してから、デバイスの柱に移らなければならないと考えています。しかし、これは不可能なことです。この組織は、ID のアップグレードが必要な数千のシステムがあることを認識します。また、多くの組織と同様に、組織全体で複数の異なるIDソリューションを使用する必要があります。そのため、たとえ 1つのシステムの ID ソリューションを最適化できたとしても(CISA モデルのレベル 4)、すべてのシス テムの成熟度レベルは 1 のままになります。これはおそらく永久に続くことでしょう。

よりシンプルで効果的なソリューションは、1つのプロテクトサーフェスを取り上げ、柱にまたがる既存のコントロールをマッピングし、成熟度のギャップを判断することです。その情報をもとに、組織はプロテクトサーフェスの成熟度を向上させるためのプロジェクトを立ち上げることができます。そして、プロテクトサーフェスの成熟度をCISAモデルにマッピングしたレポートを作成すれば、短期間で進捗を確認することができます。

以上

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